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チ)、それ以上の中・大型動物を食べる高次消費者(ナマズ、フクロウ・ワシ・タカ類、オオカミ)、というふうに食性段階の食物網によって、すべてが無駄なく複雑に関わり合って生きている。
5)人間および動物・植物を含む大部分の生物は、細胞活動のために炭水化物の分解によりエネルギーを得ており、酸素を体内に取り込んで二酸化炭素を排出する呼吸活動(異化作用)によって、このエネルギー生産を引き起こしている。一方、大部分の植物は、太陽エネルギーによる同化作用の際に二酸化炭素を取り込み、同時に同化作用の副産物として酸素を排出している。このエネルギー生産、呼吸、同化作用の3つの作用をめぐる炭素を核とした循環系が、すべの生物をつなぐ生態系による、地球の物質循環の、一方の主要な仕組みである。この循環系は、地上(水中)では生物の呼吸と植物の炭酸同化作用(光合成)のやりとりによる好気的循環系により、また地中では、生物遺骸からの炭水化物をバクテリア(主に偏性メチロトローフ類)による分解を主体とした嫌気的循環系により支えられている。
6)生態系による地球の物質循環のもう一方の主役は、窒素を核としている。植物による生産活動は、表土資源に豊富にある硝酸塩などの無機窒素化合物から、全生物の細胞の基本構造であるタンパク質をつくる元となる20種類のアミノ酸を作り出している。一方、地球上の全域で、全生物の老廃物や死骸から出る、タンパク質及びアミノ酸から、バクテリア(硝化細菌群)の働きによって、アンモニアを経由して無機硝酸塩に好気的に分解が行われ、植物生産のための表土中の養分となっている。
7)生態系を支える物質循環系の核となる植物生産は、地球上の全域で行われているが、ただし量的に見て、表土資源を主体とした無機栄養に富んでいて、もっとも多くの生物生産が行われる場所は、現在の地球では熱帯雨林と、次いでウェットランド(海深6m以浅のすべての浅水中及び湿地)である。また生物の呼吸の源である酸素生産量及び二酸化炭素の吸収量が多いのは、海洋植物プランクトン、次いで熱帯雨林である。

 

上記の内、4)の「食物網(Food Web)」は、かつては食物連鎖(Food Chain)と呼ばれた。しかし、実際にはすべての動物は単一の鎖状につながって生きているのではなく、複数の生物を餌とし、表土と植物生産の上に、喰う喰われるの網の目のような複雑な関係を持って暮らしており、現在では食物網と呼ばれている。この食物網の各食性段階を表土と植物生産の上に乗せて、「食」を中心に置いた生物の種どうしの関わりを図に示したものを、生能系ピラミッドと呼んでいる。
生態系ピラミッドは、地球の全ての生物の関係を端的に表す図である(図1-4)。生物が行き来できる連続した広がりのある環境が保たれ、豊かな安定した生物生産があるところには、本来の生態系ピラミッドが成り立ち、地球生命社会が安定して存続するため、人間が利用する食物やさまざまな生物資源を含め、自然が保たれていく。しかし自然界が分

 

 

 

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